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レコード会社のA&Rとはどんな仕事?

キニナル君が行く!
約2時間前2024年06月11日 9:02

ヤッホーみんな! 僕、キニナル君。音楽愛する大学生♪ 将来の夢は音楽でごはんを食べていくことだよ。でも、正直わからないことばかり。だからこの連載を通して、僕が気になった音楽にまつわるさまざまな疑問を専門家の人たちに聞きに行くよ。

突然だけど、キニナル君は白状します。

以前、鈴木竜馬さんに「メジャーデビューするにはA&Rの心を動かすいい曲を作るしかない」ってアドバイスをもらったとき、僕A&Rが何かよくわかってないのにわかったふりをしてました……。知ったかぶりしてごめんなさい! そこで今回はトイズファクトリーでレーベルVIAを主宰していて、マカロニえんぴつ、Eve、りりあ。、ammoなどのA&Rを務める松崎崇さんに突撃取材したよ!

取材・文 / キニナル君 撮影 / 押尾健太郎 イラスト / 柘植文

A&Rってどんな仕事?

──今日はよろしくお願いします! さっそくですが、A&Rってどんなことをする人なんでしょうか?

A&Rはアーティスト・アンド・レパートリーの略で、レパートリーは楽曲という意味合いがあって、アーティストと曲をつなげる仕事だよ。アーティストが作る曲を1人でも多くの人に届けるためにアーティストの分身となって、「どういう曲がいいか」「どういうクリエイティブにしたらいいか」「どういうミュージックビデオがいいか」などを複合的に考える仕事だと思ってもらえたらいいかな。

──レパートリーって曲という意味なんですね。1人のアーティストに1人のA&Rが付くんですか?

レーベルによってまちまちで、宣伝担当と制作担当の2人が付く場合もあるよ。宣伝担当はアーティスト担当、通称“アー担”といって、宣伝プランを考える人。制作担当はレコーディング周りの原盤制作を受け持つ人で、制作ディレクターとか原盤ディレクターとも呼ばれているんだ。その呼び名はレーベルによって変わって、アー担とかディレクターという呼び方をする人もいるし、2人ともA&Rって呼ぶ人もいる。トイズファクトリーでは本当にケースバイケースかなあ。

──ナタリーのようなメディアの窓口になるのは、また別のプロモーターと呼ばれる方たちですよね?

そうだね。レコード会社のプロモーターにはそれぞれメディアの担当が振り分けられていて、テレビ担当の人がいたりラジオ担当の人がいたり、雑誌担当やWebメディア担当がいたり。テレビとラジオを同じ人が担当する場合もあって、プロモーターは音源をメディアにプロモーションしていく役割の人たちだよ。

──A&Rがアーティストにまつわる制作や宣伝施策の発信源的な感じで、プロモーターの人がその先に広く届けていく役割ですね。A&Rはアーティストの楽曲制作にどれくらい関わるんですか?

制作って曲ができるまでのすべての過程を指すので、アーティストからデモが送られてきた際に、自分たちでアレンジまで考えたいバンドだったらスタジオを押さえてエンジニアを誰にするかを相談して具体的に詰めていくし、自分でアレンジしないシンガーソングライターであれば「この曲の雰囲気だったらこういうアレンジはどう?」ってリファレンス音源を送って、アーティストとキャッチボールしたうえでアレンジャーを決めることもあるし。歌詞までアドバイスすることもあって、関わり方はそのアーティストによって変わってくるよ。

ひとりよがりの仕事はうまくいかない

──松崎さんはA&Rとしてどんなアーティストを担当しているんですか?

現場のA&Rとして直接的にアーティストに関わっているのはEve、マカロニえんぴつ、りりあ。、あと最近だとammoっていう大阪の3ピースロックバンド。Eveはレーベルだけの関わりではなくライブ制作もマネジメント会社と一緒にやっているよ。Eveのライブは映像演出がすごく重要で、バックに流す映像にミュージックビデオを使う場合はレーベルが窓口だったりもするから、レーベルがライブ制作まで関わっていると制作が進めやすいんだ。

──そういうパターンもあるんですね……!

Eveの場合レーベルとしては3人体制で、制作担当と宣伝担当がそれぞれいて、僕は両方にブリッジして会社の窓口的な役割を担当をしているんだ。やっぱりひとりよがりで進める仕事ってうまくいかないんだよね。ちゃんと役割分担を決めてそれぞれが最大限の力を発揮したほうが相乗効果でうまくいくなと思って。

──Eveさんと言えばテレビアニメ「呪術廻戦」第1クールのオープニングテーマ「廻廻奇譚」が大ヒットしましたが、どんな宣伝施策をやったんですか?

曲がよかったからヒットしたわけで、宣伝施策で売れたわけではないけど、施策の中でも印象的だったのはテレビに初めて登場させてもらったことかな。2021年12月に放送された「NHK MUSIC SPECIAL Eve」という番組で、Eveは顔出ししないアーティストなのでNHKのスタッフの方が熱量を持ってスタジオのセットとか見え方を全部調整してくれて。いいものを作りたいというNHKの皆さんの協力とEveの最高のパフォーマンスが合致して、忘れられない思い出になった。結果的に新たな層への広がりにつながったと思うし、A&Rとしてとてもやりがいがあったよ。

──最高のアウトプットになるよう一丸となって取り組んだんですね!

まさにそう。あと、あのときは1つの曲をいろんなバリエーションで広げていくことをやってみたかったので、ライブフィルムバージョンのMVを作ったよ。アニメとのマッシュアップのMVがすごい勢いで再生されていたから、「呪術廻戦」という作品経由で「廻廻奇譚」に出会ってくれたお客さんに、“Eveというアーティスト”に興味を持ってもらいたくて急遽みんなで話し合って制作したんだ。

──EveさんはYouTubeのチャンネル登録者数が493万人いて、米津玄師さん、YOASOBIのAyaseさんに次いで国内ミュージシャンの中で第3位ですよね(キニナル君調べ。2024年6月現在)。はっきり言って、すごすぎます……!

日本で3番目の登録者数を誇るチャンネルを僕らで作ることは絶対にできなくて、あれは本人がすごいよ。音楽をアニメーション映像で表現する能力が人並みはずれていて、毎回自ら素晴らしい映像ディレクターをアサインして制作をしているんだ。その結果が今の登録者数につながっているよ。

──とはいえその中で松崎さんはどういうサポートを?

Eveのやりたいことを僕らがどう調整していくかがすごく重要。本人が理想とするMVを作るためには何をやらないといけないかを逆算して、それを1つずつクリアしていってるよ。

──YouTubeで公開されているMVには英語や韓国語、簡体語、繁体語で字幕を付けていて、それで海外の人にもリーチできていますよね。英語のコメントも多いですし。

アニメーションは国境を超えられるので、Eveはそこをすごく意識してやっている。今年は初めてアジアツアーをやるので(※取材は4月下旬に実施)、もっともっと海外のお客さんにEveの魅力に気付いてもらうためにスタッフのみんなでがんばろうと思っているよ。

レーベルの仕事としてMVがとにかく大事

──マカロニえんぴつがメジャーデビューしてからの快進撃、めちゃくちゃすごいですよね……! 松崎さんがどんなことをしたのか教えてください!

よく「メジャーになって変わっちゃったな」ってことあるじゃない? 僕は誰よりもマカロニえんぴつのファンだという自負があって、だからこそ変わったと思われるのが嫌だったんだ。曲作りに関して彼らには作りたいものが明確にあるから、外から口を挟むのではなく作りたいものをしっかり作ってもらう。彼らの活動は何ひとつ変わらないんだけど、その変わらない活動を僕がしっかり届けていくことに注力してるよ。

──活動を届けていくというのは例えば?

マカロニえんぴつのメジャーデビュータイミングではメディア戦略をしっかり練って、オーソドックスなプロモーションをレーベル、マネジメントのみんなで120%でやり切ったんだ。例えばデビュー時はコロナ禍で、ロックバンドはあまりテレビに出ていなかったんだけど、片っ端から出られるだけ出ようと決めて。

──確かに当時はSNSで話題になったソロアーティストがテレビによく出ていた気がします。マカロニえんぴつは“全年齢対象ポップスロックバンド”を謳ってるから、テレビとの相性もよさそうですね!

こんなにカッコいいことをやっているバンドがいることを少しでも多くの人に知ってもらいたくて。たまにメンバーとも思い出すんだけど、「あのときうちら異常に働いていたよね」みたいな(笑)。テレビにも出るし、取材もできるだけ受けていたから。でもアーティストもマネジメントもメディアに出るために最大限調整をしてくれたし、僕らも必死で出演枠を取りにいったし、全員が同じ分だけ汗をかいたからそういう思いがお客さんに伝播して、結果として大きく飛躍できたんだと思う。僕が何かをしたというより、バンドがもともと持っていた才能をみんなに気付いてもらえたっていう感覚に近いかも。

──なるほど! マカロニえんぴつはドラマや映画などの主題歌をたくさん手がけていて、そこを入口にファンになった人も多そうですよね。

うん、ありがたいことにタイアップのお話をいただくことも多くて。タイアップは作品ありきなので、彼らも自分たちでは作るきっかけがなかった曲に取り組むことができる。そうやってお題を提供すること、新しい何かとの接点を作ることも制作担当としてはすごく重要な仕事だと思っているよ。

──それだけ深く関わっていると、マネジメントとはどう業務をすみ分けているんですか?

マカロニえんぴつはShibuya eggmanのレーベル・TALTOがマネジメントチームとしてあって、トイズファクトリーはあくまでもレーベルとしての関わりなので、原盤制作だったりジャケットやミュージックビデオの制作だったりを担当しているよ。僕はTALTOの江森(弘和)さんの感性に全幅の信頼を置いているので、それこそライブ制作は江森さんに遺憾なく才能を発揮していただいていて、僕はタイアップとかプロモーション、あとはアートワークやMVの部分。餅は餅屋じゃないけど、分業制でやっているよ。

──マカロニえんぴつのMV、毎回ショートムービーみたいに凝ってるなと思ってました! スタッフクレジットもエンドロールや概要欄に必ず載せてあって、スタッフに対するリスペクトもめちゃめちゃ感じます!

うれしいなあ。僕はレーベルスタッフがやることとしてMVに大きな比重を置いて取り組んでいるんだ。それはなんでかと言うと、アーティストが生み出した曲を1人でも多くの人に届けるのが僕らの仕事って最初に言ったけど、僕はそれが一番できるのはMVじゃないかと思っていて。例えばどこの国かわからない海外の曲が街で流れていても耳をそばだてることは少ないと思う。だけど大型ビジョンに目を引く映像が流れれば、つい立ち止まって観ちゃうと思うんだよね。もちろん聴覚を刺激できるのが一番いいけど、まずは視覚から入るほうが曲の入口としては広いと思っていて。

──その映像がアニメーションだったら、より国籍関係なく引っかかりそうですね。

まさにそれを教えてくれていたのがEveで。僕はEveにMVの重要性を勉強させてもらったんだ。この考えを自分が担当するアーティストに還元したいと思っているので、曲ができた瞬間からどういう映像がいいかずっと考えて、それをマカロニえんぴつに限らず担当アーティストに「今回のMVはこういう感じがいいと思うんだよね」って提案させてもらっているよ。

作品を作るのはあくまでアーティスト

──りりあ。さんとの取り組みも教えてください!

りりあ。はレーベル業務とマネジメント業務の両方をやってるんだ。基本的にA&Rもマネージャーも僕がやっていて、彼女が音楽活動するうえでの相棒という感じかな。二人三脚でやっているので僕としてもやりがいがあるよ。

──じゃあ、りりあ。さんの曲作りにもけっこう踏み込んでやりとりしているんですか?

そうだね。「このデモの感じだったらこういうアレンジが合うんじゃないかな」って提案したり、歌詞のアドバイスをしたりするよ。そういうことを全部自分で考えたいアーティストもいれば、いろんな意見を取り入れてやりたいアーティストもいるんだ。だから重要なのは、自分本位にならずに、作品を作るのはあくまでアーティストだとしっかり認識すること。僕らはアーティストが求めているものを察して何ができるかを考えてそれを埋めていく。そこはA&Rとしてかなり意識してるかな。

──なんか、マンガ家と編集者の関係に似ているのかも……?

うん、前に林士平さん(※集英社「少年ジャンプ+」の編集者。「SPY×FAMILY」「チェンソーマン」などを担当)のインタビューを読んだときに、すごく似ていると思った。あくまで裏方なので自分本位にならず、マンガ家の先生──僕らでいうとアーティストがやりやすい環境作りをするっていうのかな。やっぱり締切を催促してばかりいると空気悪くなるじゃない? 明るい雰囲気ってすごく重要で、アーティストが気持ちよく活動できるよう心がけているよ。

──昔のイメージかもですけど、新人のマンガ家にスパルタな編集者もいた気がしていて、同じようにアーティストとバチバチやり合うA&Rもいるんですか?

そういう人も中にはいると思う。特に昔はレーベルがアーティストを選ぶ時代だったからね。「こういうアーティストを売り出したい」とか「うちのレーベルカラーに合いそうだからこのバンドに声をかけよう」みたいな。でも今は逆で、レーベルが選ばれる時代。僕はアーティストが自由に選んだらいいと思う。バチバチな環境を求めているアーティストは意見が強そうな人とパートナーになればいいし、自由にやらせてくれるところがいいアーティストはトイズファクトリーに来たらいいし。アーティストは自分が最強になれるためのチームを組むイメージでレーベルやマネジメントを選べばいいんじゃないかな。

──とはいえ松崎さんが今担当しているアーティストは自分から声をかけたんですよね? 松崎さんがA&Rとして契約したいと思うアーティストってどんな人ですか? 僕もA&Rの人から声をかけられたいなあ……なんて。

今も言った通り基本的にはレーベルは選ばれる側だと僕は思っているので、「アーティストを選ぶ」という考え方はおこがましいというのが大前提としてあるんだけど、今担当させてもらっているアーティストと契約したいと思った理由は、“声”と“雰囲気顔”かな。まず曲を聴いたときに“誰にも似てない声”を持っているか。次に“雰囲気顔”というのは、カッコいいとかかわいいとかではなくて、唯一無二の声とその人やバンドのキャラクターが合っていて、世の中のアイコンになりそうな佇まい、オーラを持っているか。そういう意味での“雰囲気顔”が重要だと思っているので、その2つがバチっとハマったら僕はすごくテンションが上がるんだよね。

──確かに松崎さんが担当しているアーティストの皆さん、声もいいし、顔出ししてなくても独特のオーラがありますね!

そういうアーティストに出会ったとき僕はうっとおしいくらい熱量を込めてアプローチするよ(笑)。契約させてもらったときはもちろんめちゃくちゃうれしいし、ダメだったときはすごく悲しい。

──他社と争奪戦になることもあると思うんですけど、契約を勝ち取る秘訣ってあるんですか?

たくさんのレーベルがあって、それぞれのレーベルに武器があるよね。でもトイズファクトリーにしかできないこともあるし、僕にしかできないことも絶対あるから、最高だと思ったアーティストに自分の武器を全力でプレゼンさせてもらう。これに尽きるかな。A&Rって契約がすごく大事な仕事なので、そこにこぎつけられるかどうかはめちゃくちゃ重要なスキルなんだ。

「なんとなく売れてる」は仕事じゃない

──今年1月にメジャーデビューしたammoは大阪発のバンドですよね。どうやってこのバンドを見つけたんですか?

ammoはTHE NINTH APOLLOのOrange Owl Recordsという大阪のロックレーベルのアーティストなんだけど、THE NINTH APOLLOにはいいバンドがたくさんいるので、常に新作をチェックしていて。そんな中、ammoの「なんでもない」と「不気味ちゃん」をYouTubeで聴いて、曲の歌詞と世界観に衝撃を受けたんだ。普段からYouTube、Instagram、TikTokで情報収集はしていて、その後実際にライブに足を運んでいるよ。

──やっぱり契約する前にライブには足を運びますよね?

もちろん! ライブを観ないとアーティストのキャラクターややりたいことはわからないし、自分なりの好みもあるからね。ammoはライブの内容はもちろん、自分との相性もよさそうだったので声をかけさせてもらったよ。

──ammoはもともとCDでのリリースにこだわっていたバンドですけど、メジャー1st EPはCDのみの「re:想-EP」と配信限定の「re:奏-EP」を同時リリースするという面白い形でしたよね。

やっぱり普通にやるのは面白くないなと思って。ammoだけのオリジナリティのあるリリースを考えて、マネジメント、メンバーと話し合って決めたよ。

──マカロニえんぴつもメジャー最初の作品はEPでしたけど、シングルやアルバムではなく、EPという形態にした狙いはあるんですか?(参考記事:CDや配信作品で使われる「EP」ってなに?

僕はEPというサイズ感が好きなんだ。作品コンセプトも考えられるし、アルバムよりコンパクトだから入口も広いイメージがあって。

──ammoはライブで「Zeppをゴールにはしない!」と宣言していて、これからどんどん飛躍していきそうですけど、アーティストの人気を計る指標として松崎さんはどんな数字を重視していますか?

うーん、それは本当に難しくて。CDが売れているアーティストもいればサブスクで収益が上がっているアーティストもいるし、ライブがストロングポイントの人もいるからね。それぞれ違うので一概に「この数字が大事」とは言えないんだけど、僕の場合はMVはチェックするようにしてるかな。再生回数だけじゃなくて高評価の数とかコメントの数とか、登録者数がどういう動き方で伸びているのかも。……でもやっぱり、全部かもしれないなあ。MVに伴ってSNSのフォロワー数も全部チェックしているので。僕、具体的な指標もなく「なんとなく売れている」とか「なんとなく盛り上がった」っていうのは仕事じゃないと思っていて。A&Rとしてそこの具体性は持っておかないといけないと思ってるから、常にトータルの数字を気にしているよ。

A&Rに必要な資質とやりがい

──松崎さんが担当する4組についてお話を聞きましたけど、アーティストごとにやることが違って、A&Rの仕事ってひと言で説明できないなと思いました……!

まさに「A&Rの仕事はこれ」っていう明確なものがないんだよね(笑)。でも僕は、A&Rという職業は再現性のないところに仕事の面白さがあると思っていて。アーティストによってやることがカメレオンみたいに変わるし、同じアーティストでもタイミングによっても変わってくる。常にやったことないことに挑戦できるのがA&Rの醍醐味なんじゃないかな。

──幅広い業務がある中で、A&Rに必要な資質ってなんですか? ……なんか就活生の質問みたいになっちゃった(笑)。

ははは。自分の時間をアーティストに全部割けるかどうかと、コミュニケーション能力。この2つは絶対に必要だと思う。まず時間に関して、僕らの仕事って定時が決まっているサラリーマンとは違って、土日のライブに同行することもあれば遅くまでレコーディングに付き合うこともあるし、時には深夜にアーティストから電話がかかって来て相談役になることもある。残業という概念でそれらに向き合うと本当につらい仕事だと思う。だけど自分が大好きなアーティストを担当できていたらそれは全然苦にならないよね。アーティストに割く時間が長ければ長いほどアーティストへの理解や関係値が深まるから、ここに全振りできない人は、できる人にはどうやっても勝てない。まずこれがこの仕事に向いているか向いてないかの基準になると思う。

──仕事を仕事として捉えないということですね。昔のナタリーのインタビューで、サイバーエージェントの藤田晋社長も「自分が楽しいことばかりやってる」と言ってました!

うん、仕事が趣味の延長だと思ってる。そしてコミュニケーション能力だけはスキルとしてめちゃくちゃ重要。「締切は●月●日です」って業務的にアーティストにメールするだけなら誰でもできるよね? 僕らの仕事は言われたことを伝えるだけではダメで、彼ら彼女らにとってどう伝えるのがベストかを考えなきゃいけない。それがコミュニケーション能力。時にはふざけて場がなごんだタイミングで確認したほうが気持ちよくできることもあれば、時には締切日とわかっていてもあえて催促せずに代わりに自分が謝って、次の日にスッキリした状態で伝えたほうがいい場合もある。自分なりのコミュニケーションでアーティストと接することがすごく大事。僕も全然あるほうじゃないと思っていて、毎回試行錯誤しているよ。

──松崎さんがA&Rをやっていてよかったと思うのはどんなときですか?

たくさんあるよ。リリース前の音源を自分だけずっと聴けるのはうれしいし、この仕事の醍醐味だと思う。それで、「この曲は絶対大ヒットする」って想像する時間がめちゃくちゃ楽しい(笑)。やりがいを感じるのは実際にそれが売れたとき。「これはすごいことになる」と思っていた曲が結果として出ると喜びが何倍にも膨れ上がるんだ。もちろん、そう簡単にはヒットは出ないけどね。やっぱり、アーティストからデモが届いたときが一番うれしいなあ。

──マンガ家から原稿が届いたときの編集者みたいですね(笑)。

そうそう(笑)。たまたま自分の誕生日にアーティストからデモ音源が送られてきたことがあって、そのときは最高の誕生日プレゼントだなって勝手に思ったよ。ありがとう!みたいな(笑)。

──うわーそれは最高のプレゼントですね! 今日はありがとうございました!

松崎崇

トイズファクトリー内レーベルのfactorySおよびVIA主宰。Eve、マカロニえんぴつ、りりあ。、ammoのA&Rを担当している。またbayfmで放送中の「78 musi-curate」では水曜日26:00台のDJを務める。

マツザキタカシ (@__electrock__) | Twitter 
factoryS (@factoryS_x) / X 
VIA (@via_label) | Twitter 

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